「山粧う」という言葉のように、山々が紅葉で色づき美しい姿を披露してくれています。
私は最近になり山登りを始め、街中ではみられない景色に感動をしています。
とはいえ、そんな感動の時間だけではないのが山登り。まだまだ経験不足な私の山登りの大半は
“足が痛い” “息が上がって苦しい”など楽しいとは言い難い時間が主です。
何度か心が折れそうになる瞬間も訪れます。そんな時は足を止めて息を整え、そしてまた歩き始めるのです。その先の景色を目にするために。
先日も紅葉した山頂の景色をみたいと思い、山登りに行ってきました。結果から言うと
登頂はできませんでした。登り始めて1時間ほどで息が上がり始め、さらに2時間、3時間と経ち、足を止める時間が増えていき、下山時間を計算すると登頂は諦めなくてはならない時間になっていました。登山道はきれいに整備された場所もありますが、枯れ葉や木の枝に根、岩場、さらには急な登りに下り、片足程度しかない道幅の場所もあります。
私はそんな道を歩みながら、ふと言語訓練の時間と重なる瞬間を感じます。
山頂を目指し登山道を歩むように、訓練でも目標を設定し、プログラム考え、実践する。
登山道を軽快に歩めるときもあれば、一歩踏み込むと思いもよらず斜面になっていてバランスを
崩しそうになるときがあるように、課題をスムーズに行える時もあれば、いつも通り行えるだろうと高を括っていると、思いもよらない反応が返ってくることがあります。
また山登りではルート確認を怠り自身の思い込みで進んでいくと、最悪の場合には遭難してしまう
ことがあります。これを言語訓練に重ねると、検査結果の読み取りや訓練時の反応を注意深く見ずに進めていると、訓練効果は上がらず、どうアプローチをすればよいのか迷ってしまうことになりかねません。さて、先日の山登りの話に戻ると、登頂を諦めざるを得なくなった私は、足を止めて振り返り歩んできた道のりをみました。
こんなところまで登ってきたんだなと思い、目に映る草木や苔の景色を美しいと感じました。
そこに座り込んでお昼ゴハンを頬張っている私の頬に優しい風が通り抜け“今日はここが頂き。次はこの先へ歩みに来よう”と思ったのでした。
訓練も予定通りに行かない日もありますが、次の訓練でまた先へと歩みを進めながら、目標の頂きに辿り着いていくのです。山頂でみる景色も登山道でみる景色もそれぞれに素敵です。言語訓練も
目標を達成した時だけでなく、訓練の中で成長に触れたとき、携われた喜びを感じます。私は
どちらも、一歩一歩、経験を積んで、たくさんの素敵な時間に出会っていきたいです。
言語聴覚士